円谷英二の映像世界
The visual world of Eiji Tsuburaya
1983年 実業之日本社 初出
2001年 完全・増補版
編者 竹内博・山本眞吾
私の人生を決めてしまった人、円谷英二監督についてこれ以上細かく書かれた本はいまだに出ていない。
中学生の時だったか、雑誌に「写真集・円谷英二」が小学館から発売されているという記事を見つけたのだが、時既に遅く、小学館にさえ在庫がなかった事がある。問い合わせた
小学館の人の「円谷プロにならまだあるかもしれない」という言葉に矢もたてもたまらず円谷プロまで出かけて行き何とか数冊残っていた本を譲っていただいた事を懐かしく思いだす。その時に見せてもらった怪獣倉庫や塀越しに覗いた大プールの事はいまだに鮮明である。思えばあの時に映像の世界で働く事を始めて意識したのではなかったか。若い方でも「ゴジラ」の円谷英二といえば御存じであろう。「特撮の神様」と言われた人
である。特殊撮影というと怪獣映画と考えてしまう方が多いと思うのだが、実はこの特撮こそ映像の映像たらんとする根幹の技術なのである。今でこそレンズを使わないCG等の映像が存
在するが、かつて映像は全て(オプチカル処理も含めて)レンズを通して結像されたものしか存在せず、このレンズを巧みに使いこなして様々なイリュージョンを作り出す事こそ特撮なのである。私は今ドキュメンタリー系の仕事が多いのだが、現実をただ映しているように思われがちなこの世界でも、特撮に対する知識と経験は役にたっている。
単なる風景を撮影する時にも、円谷作品で観たパースのつけかたを応用すると、迫力のある映像になったりする。ミニチュアワークで空気層とレンズを使ったパースの強調などが重要なファクターになるということを知っていれば、現実世界を映す時にも実践できることなのだ。
そしてこの事はCG作品を創っている時にも非常に役立つ。所詮現実ではないものをどうやったらそれらしく見せることができるのかと考えた時、円谷特撮がヒントを与えてくれ
るのだ。
特撮というと一部の専門家だけのもので一般の作品には関係ないと思われがちなのだが、これから映像を創る側に向かおうとする人たちにこそ読んでほしいし、キャメラを使って
何かを表現しようと考えている人には必読の一冊である。
先の「撮影監督宮川一夫」と共に私のバイブルである。