撮影監督宮川一夫の世界 「映像を彫る」
The World of Cinematographer Kazuo Miyagawa
1984年 ヘラルド出版 初出
1997年 改訂版 発行 株式会社パンドラ 発売 現代書館
著者 渡辺 浩
世界的に著名な日本の撮影監督、宮川一夫さんの仕事をまとめた本である。
1943年版の「無法松の一生」、「羅生門」、「雨月物語」、「山椒太夫」、「炎上」、「おとうと」、「用心棒」、「瀬戸内少年野球団」等日本映画が持つ珠玉の作品を手掛けた撮影者である宮川さんの撮影に対する様々な方法や考え方等が書かれている。
初版を読んだ時、私はフリーランスの撮影助手として仕事を始めた頃で日々の仕事の中でずいぶんと参考にさせていただいた。そしてしばらくの間、私のバイブルだった。
キャメラ、レンズ、フィルム、それらを自在にあやつり作品世界を構築していく氏の仕事振りに大いに刺激を受けた。
溝口健二作品「近松物語」では、『実はレンズは事実をそのままには写さない。レンズ固有のファクターをよく知っているキャメラマンの意志どうりにしか描きとらない。』
同じく「雨月物語」では、絵巻物を見るがごとく移動するキャメラ。
「炎上」の反射光の使用。「用心棒」での望遠レンズの効果的使用等、枚挙に暇がない。
全ての撮影者、撮影を志す者、スチール、ムービーを問わず、必携の書である。