麦秋
Early Summer
1951年度 松竹株式会社作品
製作 山本 武
監督 小津安二郎
撮影 厚田雄春
脚本 野田高梧・小津安二郎
『麦秋』をみたのは20代の始め頃だったと思います。
高校生の頃に『東京物語』を観て感動した記憶がこの作品を観るきっかけになったのでしょう。当時はまだ珍しかったレーザーディスクを購入し、毎週の様に観ていました。
小津監督の作品のほとんどはそうやってTVモニターで観ました。
何か映画をTVで観る事を悪く言う人もいるようですが、この作品に関しては自分の空間で向き合った事が良かったのではないかと思っています。
内容は、ある一家の日常と娘の結婚までを描いています。
実に淡々と話は進みます。娘を演じる原節子には芯のある美しさを感じます。
カッティングのテンポはゆっくりで、キャメラはほとんど動きません。
所謂小津調です。最初はその事に戸惑うかもしれませんが、しだいにその家庭の中に自分が入り込んでいます。家族一人一人の気持ちが分かり始めた時、娘が波紋を起こし、一家は別々に生きていくことになります。
皆がお互いを思いやり、幸せを
願う。優しさというものをしみじみと感じさせます。刺激をエスカレートさせている現在の映画に疲れた時、寂しさを感じた時、私はこの映画を観ます。