ゴジラ

Godzilla

1954年度 東宝映画作品



製作   田中友幸
監督   本多猪四郎
特殊技術 円谷英二
音楽   伊福部昭


おそらく、ゴジラを知らない人はいないでしょう。
それくらい有名なキャラクターです。
確か、「ゴジラ」を始めて観たのはNHKで放送された時と記憶しています。
正確な年までは覚えていないのですが、小学生低学年、日曜日の午後だったと思います。
私自身、ゴジラは「三大怪獣 地球最大の決戦」から劇場で観ていたのですが、 
この「ゴジラ」は観ていませんでした。公開された時生まれてなかったのだから、
当たり前と言えば当たり前ではありますが。
当時はTVで「ウルトラQ」を始めに「ウルトラマン」等の特撮番組がめじろおしの時代で、怪獣ブーム、特撮ブームといわれていました。
事前に新聞で「ゴジラ」が放送される事を知った私は、それこそロケット打ち上げの秒読みの様に放送日を待っていました。そして待っている間も何とか「ゴジラ」を記録しておきたいと思い、6mmのオープンリールテープレコーダーに音声を記録しておく事を思い付き、何度もテストをして本番に備えました(ビデオなど夢の時代。たまたま父がSONYに務めていた関係で、まだ珍しかったテープレコーダーが家にはあったのです)。
実際に放送を観た印象は、「何だか自分の観ていたゴジラと違う」でした。
モノクロで陰鬱な画面にゴジラが棲息していたとでも言いましょうか。
それまで私が観ていたゴジラは明るい画面で破壊を繰広げるという世界でしたからその差は歴然としていました。後期のゴジラからは原爆や水爆といった核兵器の影がまったくといっていいほど忘れられていたように思います。
さて、放送も終わりテープ録音も上手くいった私はそれからしばらくは寝る時にその「ゴジラ」のテープを聞くのが日課となりました。音から画面を想像し独り興奮していたのです。それは聞けば聞く程私の中で「ゴジラ」という映画が持っていたテーマを理解させていく事になりました。音で聞く「ゴジラ」の世界ではまず伊福部昭の音楽、そしてゴジラ自身の叫び声が映像を観ていた時よりも印象に残りますが、ゴジラ襲撃後の東京に流れる「乙女の祈り」と言われている曲では、ゴジラという脅威の前ではなすすべのない人間の無力感を感じ、ゴジラが破壊を繰広げてい
る最中無音になる事が多かったのが、その音のない部分にゴジラの存在を感じたりしていました。
この時から私の中には二つのゴジラが存在し始めました。
片や、ヒーローとしてのゴジラ。そしてもう一つは破壊の神としてのゴジラ。
この二つのゴジラを意識するようになってから映像作品を観る見方が少し変わり始めたように思います。
「ゴジラ」は映像というものが持っている可能性を私に教えてくれた作品です。 
それまでゴジラというキャラクターしか観ていなかった事に気付かされたのです。
映像本体とでも言いましょうか、目に見えているものだけではなく、見えない物でも表現することができるんだという事をその時の体験から学んだように思います。