No.8 ドキュメンタリーの場合

 私は上からマイクを振っている。人物の動きについて行くには上からが一番いい。 下からだと手を動かしたり、物を持ったりした時に音を遮られる事がある。
マイクが目障りだと言う監督やカメラマンがいる。マイクとカメラ、どっちが大きい か誰が見ても判る。マイクポジションが遠くなれば明瞭に音は採れない。芸術的な映 像を撮っても何を言っているか判らなければNGである。被写体となってくれた人が 何を言いたいか、それをきちんと伝えるのがドキュメンタリーにおける信頼関係であ る。

 ドキュメンタリーでは話し言葉の他に現場の状況音が重要になってくる。時間や場 所、季節を表す音がそこにはある。しかも音は上下右左に存在している。映像は一面 的だが、それにぴったりの音は映像の方向とは限らないのだ。どの音を採るかは人に よって違う。欲しい音があればすべてを採る事が現場の基本である。
 マイクが風に吹かれるとボコボコした音になる。風の音は草が揺れたり、木々の葉 がこすれ、或いは電線がうなる事であり、ボコボコではない。TVでは平気で使って いるがあの音は録音の失敗を恥としない人のやり方だ。現場の状況判断をし、ウィン ドスクリーンを付け万全の準備をするのがプロの基本である。