No.7 現場録音

 マイクは機械なので音と感じれば何でも採ってしまう。つまり選択出来ないのであ る。どんな音をどう採るかは人が決める事である。時として思わぬ音が入っていて驚 く程ぴたりと決まることもある。

 ドラマでは人物の頭上からセリフを採るのが普通である。音にピントを合わせる事 を《面》メン を合わせるといっている。テストを繰り返しレベルを決める。1カット 毎にアップ、バスト、ロング等と映像が変わる。それに合わせてマイクポジションも 変わる。それらがシーンの中で順番に撮られることはほとんどない。順不同で採った 音をスムーズにつながるように録音する事が難しい。チーフ助手の<腕>の見せ所だ 。マイクマンはチーフの指示でポジションを決める。役者が一人というのはまれで、 ほとんど複数である。役者の動きに合わせ、<面>を合わせてマイクを移動させセリ フを採っていく。当然セリフを覚えないとマイクは振れない。1本のマイクで採るの が普通である。

 ブームは竹製で各自が自分に合わせて作った。長いブームは釣り竿のようにツナギ を作った。マイクマンはセットの天井に作られた二重(ニジュウ)と呼ばれる足場の 上からマイクを振る。上からの距離感をつかむことが正確なマイクポジションを決め ることになる。役者に対してのマイクの高さ、角度を経験で覚えるしか方法はない。 私は目線とマイクの先に目印を見つけるようにした。ロケセットになると役者と同じ フロアでマイクを振れる。
 撮影時、最初に決まるのがカメラポジションで、次に照明が決まり、最後にマイク が入る。マイクがフレームに入ってはいけない、マイクの影を出してもいけないと制 限されるのでマイクポジションは最良の条件をなかなか取れない。

 マイクはゼンハイザー416が使われている。指向性があるのですぐに音が外れる 。より指向性の強いマイクは、それだけ角度が狭くなり、使い方が難しくなる。指向 性の範囲を確認し、理解する事が第一歩である。