私が助手だった頃は真竹で自分用のブームを作ることが最初の仕事だった。先輩に
教えて貰いながらロケセット用、撮影所のセット用などと作り、先端にマイクを取り
付ける通称<象の鼻>も作った。これは優れた道具でマイクを360 度回転させること
が出来た。
現在のブームはアルミやカーボン等で軽く、伸縮自在、とても使い易い。しかしマイ
クが直付けなので回転させる事は出来ない。スタジオの大型ブームは良く出来ている
がロケには向かない。
ブームを持つ時は、足を肩幅よりやや広くし、両手を上にして左手にブームを乗せ
、右手はブームの元の方を握るようにする。利き腕によっては逆でもいい。左手の位
置にバランスの中心が来るようにすると動かし易い。右手はブームをひねる事によっ
てマイクを左右に振る事が出来る。この姿勢で一番体が楽な構え方をしていると、長
い時間でも持っている事が出来る。姿勢が悪く無理な体勢を取っていると、腕だけで
ブームを支える事になり、ブルブル震えだしてしまう。テコの原理で、左手を支点と
考え、自分にあった持ち方を見つける事が上達のコツである。
セットの二重から振る時は、まったく違う。膝を曲げた姿勢で上から下へマイクをお
ろす。利き腕でブームとマイクの重さを支え、片手でブームを左右に振り、或いはひ
ねってマイクを合わせる。膝の上に利き腕を乗せれば長いカットもしのげる。二重は
照明用が主なので、我々はライトの隙間から仕事をしている。冬はいいが夏は汗がと
まらない。ライトはスルメが焼けるほど熱い。
二重の場合、部屋から部屋へ移動する動きを追ってマイクを継いでいく事が出来る。
部屋の境目で最初のマイクが送り、二つ目のマイクが受け取るように角度をつけて引
き継ぐ。中ボケしないように合わせていくタイミングは技師の仕事である。
力を抜いた姿勢でブームを持つこと、マイクと自分の目線の延長線でマイクポジショ
ンが判るようになる事、この二点に尽きる。
◎時代劇では、よく三味線が出てくる。
役者は誰でも弾ける訳ではない。そこでプロが弾き、録音した物に合わせて役者は手
を動かす。PB撮影、プレイバック撮影という。ピアノや歌なども同じだ。カットの
少し前に編集用のキッカケを作る。テープを再生すると、キッカケでランプが点き、
カメラに入りフィルムが白く感光する。シネフィルムに録音するとキッカケがビーと
いう音になる。感光とビーを合わせると画と音が合う事になる。この部分の編集は録
音部がやった。