先日、あるプロダクションにふらりと立ち寄った時、会社の壁に貼ってあった一枚の紙に目が留まった。A4のコピー用紙のようだが、そこにはこう書いてあった。「人生まだ白素材」・・・
誰かの座右の銘なのだろうか? スタッフの誰かが書いたに違いないが、妙に印象に残った。
最近、自分は今、人生のどの地点にいるのだろうか?と・・・ふと考えてしまう時がある。自分がテレビ業界に入ったのは、昭和63年。バブルの時代だったその頃は、テレビスタッフも大量生産・大量消費だったような印象が残っている。自分の周囲でも次々に新しいスタッフが入っては消えていったように思う。(今でもその傾向はあるが・・・消えていった人々がその後どうなったかは殆どわからない。自分は方向転換せずに、この業界一筋で生きてきた。役職も、ADからディレクターになりプロデューサーまで任されるようになった。その機会は、ある日自然に訪れ、当然のように新しい壁が待っていた。どの世界でも状況の変化というものは必ず起きる、それを早く予期できるか?すばやく適応できるか?が運命の分かれ目なんだろう。(「逃げるが勝ち」という場合もあるが)人生を旅になぞらえて語る話をよく聞くが、番組の制作過程も旅のようなものだ。自分の場合は、今オフラインが固まってきたって所だろうか・・・それとも白素材かな?
(試行錯誤は終わりつつあるが、まだやり直しは出来る)こう考えてみれば結構コミカルで面白いし、苦しい時でも案外気分が楽になるものだ。さて、今年はどの段階に進むのだろう?そろそろオフラインも終わりにしなくては・・・・・・・
<2001年1月寄稿>
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追記:2005年5月
上記の「人生まだ白素材」は、4年半前に私が重枝氏の依頼により書いたものですが、久しぶりに読み返してみたら思わず赤面してしまった!それはさておき・・・・・この4年間で、テレビ業界は随分変わったなあ~という印象があります。もうすぐ地デジも始まるし、これから更に変わるでしょう。今まで、「何とかなる!」精神で何とかなってきたのですが、この先は油断していると危険な雰囲気を感じます。白素材は、とりあえず温存して、新しい仕込みに入らなくてはと思う今日この頃です。
注)白素材とは、編集過程の一つ。スーパーを入れる直前の状態をいう。ちなみにNHKではクリーンピクチャーという。