映画を作る事は撮影、編集、スタジオでの仕上げ、そこまでで完了したと思われがち
だ。自主制作や学生の試写会で強く感じる。かなり立派な試写室があるのに映像がピ
ンボケという事がよくある。映っていればいいという位にしか思っていないのかと不
快になる。ビデオ作品では色、明るさを調整せずにオリジナルとはかなり違う状態で
見せられることがある。あまりの奇抜さに質問し、原作を見せて貰い、その落差に驚く
ことがある。音についても同じ事がいえる。音質やレベルを確認していない。これで
は何を言っているのか伝わってこない。
映像も音も悪い状態で彼らは何を伝えたいのだろうか。伝えたいという気持ちがあ
るのだろうかと疑う。作ったという自己満足で完結している。
作るという事は他人に伝えてはじめて作品になる、最良の状態で上映することが最低
の条件だと思う。
★ 黒沢明監督のことば
「言葉でいえないから映画を作るんでね。
昔は日本にもすてきなものがいっぱいあった。
昔はお客さんの鑑賞力も高かったが、今では悪貨が良貨を駆逐している。営業の仕方
にしても、いい状態で観せる努力をしていない。ピンボケで上映して平気なんだから
大問題だ。日本ではお客さんをチケットとしか見ていない。作る人は神経を使ってい
るのに映画会社がダメにしてしまう。」